蓬莱 今野敏

先週買って、スーツケースに入れっぱなしだったので感想。

今野さんの本は、ミステリーといいながら、
刑事物、伝記物などの要素が入りいつも一気に読み上げてしまいます。

本作は、蓬莱という名前のシミュレーションゲームの開発会社と、
その発売を阻止しようとする組織、
神南署の刑事たちの攻防を描いた、ハードボイルド小説。
蓬莱と来たら、あの人ですよね。
和歌山出身の人は間違いなくピンと来るのでは。
それが、どう現代ミステリーと絡むのか。

まあ、権力者の振る舞いが釈然としなかったり、
エンジニアがスーパーパフォーマンスを発揮したりしますが、
ソフト開発会社の気持ちが痛いほど伝わるのが、
現職の悲しい(?)ところ。
日本の古代の歴史は不明確なので、
伝記物って多いですよね。
そこに蓬莱伝説を組み込んだのが興味深いところ。

マニアックなツッコミをさせてもらえば、
始皇帝がどういう人物だったのか。

初めて中国を統一したこの人物、
書物によれば極悪非道、冷血無比の怪物です。
そんな人が大軍を率いて国家統一を出来たのでしょうか、
度量衡の統一を行って理知的な政治を出来たのでしょうか。
もし悪逆非道の皇帝であったのなら、兵馬俑を作る必要はあったのでしょうか。

確かに皇帝になり狂ったのかもしれません。
不老不死に執着してしまったのかもしれません。
でも、不老不死を願った皇帝は、自分の墓所を作るでしょうか。
幾万人もの人柱を要求出来る人間が、焼き物の人形を死出の道連れにするでしょうか。
では、蓬莱とはなんだったのでしょう。

歴史的根拠も証拠も何もない個人的な好みですが、
始皇帝の求めた若さは国家だったのではないでしょうか。
政(始皇帝の名前)は歴史を学び、生き抜いた春秋戦国時代から、
繰り返す歴史こそ抜け出せない中国の性として感じたのかもしれません。
始皇帝の求めた不老不死とは、歴史から抜け出して、
火の鳥のように生まれ変わる原始からスタートする国家だったのかもしれません。

うーん、ネタバレしないように、
自分の歴史観を言いたいけど。

あーと、本編に触れずに締めると、
始皇帝は次の国家が出来たから悪役にされてしまった、
「大政治家」だと思っています。
曹操は見直され始めたギリシャ的「偉人」だと思います。

始皇帝とか曹操については、また纏めて書きます。

あ、自転車と全く関係ない。